143. 一月中旬、謀り、孤軍

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一月中旬、たばかり、孤軍


 オレンジ色の水性ペンで、
 大事なコンペの参加表明。

 突き返された書類の下部、
 氏名欄の品字様ひんじようが不明確。

 ともあれ屋敷のあるじが死んだ。

 音声と血文字で残されたのは、
 ご丁寧な死に際のメッセージ。

 それを解読できるかどうかが、
 今後の卯建うだつを左右するようだ。

 そうと決まれば考えないと。

 下屋げやで見つけた新聞記事。
 何かのヒントにならないか。

 書斎で見つけた走り書き。
 私のレビューにならないか。

 相関図が揺らす神経回路へ、
 ベテラン勢の不意の冷やかし。

 プラスチック製の赤いカードで、
 ライバル同士が手を組んだらしい。

 そこへ駆けつけた使用人ら。

 全員が葬儀に招待されて、
 パソコンが並ぶ情報室へ。

 個別ブースで再生される、
 隠し撮りの全サプライズ。

 どうやら主はかなりの悪党。

 私を囲んでいる使用人一行は、
 しばしの絶句から恨み節の唱和。

 後ろめたいことがあったのか、
 家令かれい対峙たいじして囂々ごうごうの舌戦に。


「地獄へ落ちろ、地獄へ落ちろ」

「君たちは転職先を探さないと」


 記憶はおぼろな一心同体。

 一匹狼の光明に帰属。



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