109. 金縛り返り

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金縛り返り


 内腿うちももかゆみに強いられた五時起き。
 事態を受け止めて腕を伸ばす。


 舟をぐような音がした。
 ベッドがきしむ音ではなかった。

 近づいてくる、近づいてくる。

 足下の白い壁にもやが掛かった。
 途端にひどい耳鳴りがした。


 第一波は十秒くらい。
 強制的に薄目が開く。

 何も見えない、何も見えない。

 第二波は十秒もかからなかった。

 何も見えない、何も見えない。

 第三波は右腕をつかむ。
 怖くない、怖くない。


 第四波、脳下垂体のうかすいたいがツンと冷たい。

 身体が浮上する。
 天井を透過する。

 これはもう戻れないかもしれない。


 八時前に落ちた二度寝にお仕置き。
 期待を裏切られて目を覚ます。


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