108. 六月下旬、重ね、疎通

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六月下旬、重ね、疎通


 これから入る棺桶かんおけの前で、
 どうでもよかった父の告げ口。

 私の仕事は誰にでもできると、
 揶揄やゆした親戚の女について。


 これから入る棺桶の上に、
 やや見劣りするファイルの山。

 私の仕事は大したことないと、
 自覚させられる青さの累積。


 自転車をいで住宅街。

 ハンドル操作を誤った母子ははこと、
 ハインリッヒの三百の事故。

 彼女らが落とした赤い帽子が、
 謝意を表す前に中年の怒号。

 その矛先が「お前」に向けられ、
 爽やかな生返事で誤魔化した。


 自転車を漕いで大都会。

 並走する能天気な女によると、
 金色のバッグは百万円相当。

 うろこまで鮮明に焼きついた瞳が、
 同窓を捉えてヒヤリハット。

 気づいた彼の目も私に向けられ、
 近況報告を笑って誤魔化した。


 飛んで我が家のベッドの上。

 誰かと会う予定があったはずで、
 夜が明けるまで連絡を待った。

 全て夢だったと直感が働いて、
 覚えていたことをメモに残した。


 飛んで我が家のベッドの上。


 全て夢だったと寝惚ねぼけ眼で、
 気怠けだるい朝に扇風機をける。


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