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六月下旬、重ね、疎通
これから入る棺桶の前で、
どうでもよかった父の告げ口。
私の仕事は誰にでもできると、
揶揄した親戚の女について。
これから入る棺桶の上に、
やや見劣りするファイルの山。
私の仕事は大したことないと、
自覚させられる青さの累積。
自転車を漕いで住宅街。
ハンドル操作を誤った母子と、
ハインリッヒの三百の事故。
彼女らが落とした赤い帽子が、
謝意を表す前に中年の怒号。
その矛先が「お前」に向けられ、
爽やかな生返事で誤魔化した。
自転車を漕いで大都会。
並走する能天気な女によると、
金色のバッグは百万円相当。
鱗まで鮮明に焼きついた瞳が、
同窓を捉えてヒヤリハット。
気づいた彼の目も私に向けられ、
近況報告を笑って誤魔化した。
飛んで我が家のベッドの上。
誰かと会う予定があったはずで、
夜が明けるまで連絡を待った。
全て夢だったと直感が働いて、
覚えていたことをメモに残した。
飛んで我が家のベッドの上。
全て夢だったと寝惚け眼で、
気怠い朝に扇風機を点ける。
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