48. 十二月中旬、青く、巡行

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十二月中旬、青く、巡行

 
 ホテルの窓から見えたのは、
 大樹たいじゅより高い真っ赤なポスト。
 驚いた勢いでポーチを落とすと、
 無数のパールが散らばった。

 加えて床にはターコイズブルーの、
 氷砂糖のような宝石がまばらに。
 パールを拾い集めている最中さなかに、
 ポーチに宝石が紛れ込んだようだ。

 それは近くにたたずむオーナーの私物で、
 彼は私をにらみつけている。
 弁明もむなしく不信感が透けている。
 気まずさに押されてチェックアウト。

 近場の旅館を目指していたら、
 誤って静かな工事現場に行き着いた。
 徐々に足場が悪くなって気づいた。
 私は高大な砂山を下っている。

 もう二度と後戻りはできないと、
 湧き上がる焦燥に空谷くうこく跫音きょうおん。
 声をかけてきた一人の土工。
 彼が安全地帯まで導いてくれた。

 青空を眺めながら再び歩き出した。

 少しずつ人通りが増えている。

 すれ違う人も皆、空を見ている。

 その奇景に私は疑問を抱かなかった。

 坂道で会った中年女性に、
 旅館までの道を教えてもらった。
 懇切丁寧な対応のお礼に、
 なおも続く冗談の終わりを待った。


 とある一室では一組の男女が、
 警察から事情聴取を受けている。

 不在証明の決め手であったらしい、
 彼らがに行った映画の公開は、
 たった二日間だけであったらしい。
 そこを突かれた二人の足掻あがきが、
 ドイツ語の話し合いが馬鹿らしい。

 公然と展開される口裏合わせに、
 聞き手の苦笑が重なっている。


 新しい布団に寄せた期待。
 及第点に引っかかりたい。

 残念ながら時系列は曖昧。
 合格点にはまだ足りない。

 それでもつづる執念が痛い。


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