49. カクテライズ逆流

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カクテライズ逆流
(『アンカクテライズ』1/2  )

 
 期待値の低迷や平均値の邪推を、
 やおら覆してカクテルを成した、
 代々木のステージから約三百日、
 時系列は数日前の雑夢ざつむのように、
 新しい二秒間を残したくなった。

 予習して臨んだアリーナの色は、
 今日を過去にする黄昏たそがれのライト、
 報われなかった春の日のベール、
 何度もリピートした風の冷たさ、
 二人だけになれなかった淡い炎。

 それらを混ぜて有耶無耶うやむやにせず、
 それぞれの色を味わえるまでに、
 聴き込んだ私は変わってしまい、
 炭酸の抜けやしない彼女の空は、
 未来をぼかすには十二分な歌々うたうたに。

 あの日は響いた自殺者の決意と、
 あの日は響いた猟奇的な愛情と、
 あの日は響いた青天井の寂寥せきりょうを、
 ショートカットした髪はつやめき、
 もうまぶし過ぎて近づけやしない。


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