=================== 十月上旬、醜く、続々 立ち寄った駅の地下が騒がしい。 どうやらドラマの撮影中らしい。 亡くなったはずの俳優と、 それを取り巻く有象無象。 周囲の黄色い歓声を意に介さず、 薄気味悪い広大な空間を見渡す。 生ける屍が湧いて出そうだ。 そう思った途端に無数の影が、 遠くからぞろぞろ現れた。 周知の言説を蹴散らすが如く、 全速力で迫って民を殺す。 九死に一生を得たらしい私は、 荒廃した住宅街を漫ろ歩いた。 襲いかかる演技を衒らかす、 我が残る屍には遊び心がある。 そうと判って初めて縁取る、 普遍集合は草臥れた叫喚地獄。 誰かが望んだ世界だろうか。 意味深な考察を加える暇もなく、 どこかの家庭でちびっ子が泣く。 その家族の皆が握った手。 食堂の券売機に首ったけ。 唐突な着信音が心臓を射貫いて、 何もかも嘘だって早く気づいて。 ===================
コメント