130. 忘れ種のラン

===================


忘れぐさのラン


 常温のドリンクに甘えがちな季節。

 喧嘩腰けんかごしのココアに蒸気は見えず。

 不必要に身体からだほてってきたら、
 燃焼と浄化、駆け算のお時間。


 無辜むこの犬を従えた烏合うごうの衆は、
 日の入りの早さに屈したらしい。

 習慣化目前のニューカマーは、
 易々やすやすとコールド負けしたらしい。

 計算が多分に楽になった。

 か細い電子音でスタートを切ると、
 走り回る子供らのランダムな軌道、
 譲られて当然のベビーカーの軌道。

 12時の方向、障壁を捕捉。

 連ドラのオープニングさながらに、
 高邁こうまいな隊列を組む若人のしこりが、
 公共の福祉に流されぬままに、
 成体へと変態できるといいな。

 11時の方向、光源を捕捉。

 ゆとりある公道でフローを装うと、
 立ちぎする同期らの邪な よこしま 前照灯、
 目眩めくるめく対向車の自己奉仕的前照灯。

 計算が少し複雑になった。

 小石をり潰して信号を送れば、
 睚眥がいさいうらみなくノックダウン。

 足し算の誤りを報知するような、
 何度目かの赤子のドップラー。


 不条理を流汗で洗い清めたら、
 平穏と消化、駆け算はおしまい。

 憂さは晴らせても計算は間違い。

 二の腕の肌理きめだけが不幸中の幸い。


===================

コメント

タイトルとURLをコピーしました