46. 心悲しき哉

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心悲うらがなしきかな


 僕を知らなければ朝礼台で、
 思いの丈をさらすこともなく、
 引っ込み思案のままだった。

 そんな彼女が立派になって、
 背筋を伸ばして颯爽さっそうと歩く。


 俺と違うクラスなら教室で、
 堂々と発言することもなく、
 ずるずると居場所を失った。

 そんな彼にも恋人ができて、
 並んで仲良く商店街を歩く。


 私が素通りしたならビルで、
 知人と談笑することもなく、
 その身を落とすはずだった。

 そんな誰かが今でも笑って、
 私のことなど知らずに歩く。


 そんな彼らの晴れをおもって、
 翼を欲しがる天使を望んで、
 無駄足を示す正解を恐れて、
 余計な空想を随所に添えて。


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