112. 暑気あたり

===================


暑気あたり


 不測の事態に飽きた人々が、
 梅雨明けの日射ひざしを奪い合うように、
 わらわらと動き出したようだ。

 言うまでもなく愚かな私も、
 彼らより逼迫ひっぱくした低劣な事情により、
 いそいそと独り腕を焦がした。


 この熱で殺してほしいと思った。

 何よりそれが丁度いいと思った。


 ややもすれば思い出に支配されそうで、
 アルコール消毒に荒されたこうで、
 塩気の強いフラッシュを拭い去った。


 なかったことにしたいと思った。

 何よりそれが丁度いいと思った。


 隙を突く陳腐な自動思考も、
 物分かりのいいシャッフルに日和ひより、
 すごすごと軽躁けいそうの陰に隠れた。

 いまだに努力家を志す頓馬とんまは、
 鵺的ぬえてきなエトセトラと心中するように、
 だらだらとはかない南中に絡んだ。


===================

コメント

タイトルとURLをコピーしました