107. 蛇尾ときどき

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蛇尾だびときどき


 一銭も払わずに契約した土地には、
 家賃千数百円のアパートがあって、
 悶々もんもんと引き籠もって詩人をかたって、
 極めて遅咲きの観念奔走を聴いた。

 感受性が代名詞になり得る時期に、
 物語る余裕なんてなかった廃人が、
 文字単価0円で書き上げる詩々ししは、
 文字単価1円の記事より凛々りりしい。


 生きた気になるなら今のうちだ。


 臆病風より速く筆を走らせろ。

 減速を見越して予防線を引け。


 夕間暮ゆうまぐれの命令に従いながら、
 危急存亡とのラポールを築いた。

 安アパートのひび割れを見抜いた。


 創られた1コマが通り過ぎる。

 鳴りを潜め続ける毎日でも、

 主人公みたいに飛ばせたら、
 起承転結の起と承が光る。

 主人公みたいに壊せたら、
 起承転結の転が高鳴る。

 わずらわしくて居心地が悪いから、
 斜に構えたカーブを投げたのだ。

 首の皮一枚で合理化したのは、
 主人公みたいに泣けたから。

 創られた1コマが通り過ぎる。


 結局は0円のフリックの涅槃ねはん。

 臆病風より速く予防線を引けば、
 時給85円のタイピングの出番。


 前途を揺るがす概念駆動は、
 危急存亡とのラポールを砕く。

 無為を射竦いすくめる時計の針は、
 安アパートの罅割れを広げる。 


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