=================== 幽 徘徊趣味のルームメイトは、 愛想を尽かして出て行きました。 その後に現れた幽って奴は、 混血児だった彼女とは若干異なって、 痩身で小目、性格は控えめ。 初対面では怠け者に思えたが、 あくまでそれは有能さゆえ。 すでに張り巡らせたネットの資本で、 文字通りFIREを達成したよう。 部屋の隅にハンモックを備えつけて、 全身を剥き出しにして大胆に眠る。 そんな無防備が恋しい昨今、 とりわけ飛蚊症は幽の残像。 偽の睡眠を喫する国民的少年めく、 油断に満ちた一眠りには気をつけて。 ふらふらと危うい無重力の酔歩で、 目立たない糸を辿って帰還したよう。 もうスリッパには無頓着で、 出会う前と違わない行住坐臥。 すっかり動きが鈍った僕は、 反射的に「おかえり」と呟いていて、 風来の立命、焦げる熱視線。 目に見えない割に丈夫なんだな、 低徊趣味を繋ぎ止める糸は。 ===================
134. 幽

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