===================
十二月中旬、青く、巡行
ホテルの窓から見えたのは、
大樹より高い真っ赤なポスト。
驚いた勢いでポーチを落とすと、
無数のパールが散らばった。
加えて床にはターコイズブルーの、
氷砂糖のような宝石が疎らに。
パールを拾い集めている最中に、
ポーチに宝石が紛れ込んだようだ。
それは近くに佇むオーナーの私物で、
彼は私を睨みつけている。
弁明も空しく不信感が透けている。
気まずさに押されてチェックアウト。
近場の旅館を目指していたら、
誤って静かな工事現場に行き着いた。
徐々に足場が悪くなって気づいた。
私は高大な砂山を下っている。
もう二度と後戻りはできないと、
湧き上がる焦燥に空谷の跫音。
声をかけてきた一人の土工。
彼が安全地帯まで導いてくれた。
青空を眺めながら再び歩き出した。
少しずつ人通りが増えている。
すれ違う人も皆、空を見ている。
その奇景に私は疑問を抱かなかった。
坂道で会った中年女性に、
旅館までの道を教えてもらった。
懇切丁寧な対応のお礼に、
尚も続く冗談の終わりを待った。
とある一室では一組の男女が、
警察から事情聴取を受けている。
不在証明の決め手であったらしい、
彼らが観に行った映画の公開は、
たった二日間だけであったらしい。
そこを突かれた二人の足掻きが、
ドイツ語の話し合いが馬鹿らしい。
公然と展開される口裏合わせに、
聞き手の苦笑が重なっている。
新しい布団に寄せた期待。
及第点に引っかかりたい。
残念ながら時系列は曖昧。
合格点にはまだ足りない。
それでも綴る執念が痛い。
===================
コメント