114. 七月下旬、戦ぎ、安寧

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七月下旬、そよぎ、安寧


 雑然とした誰かの部屋で、
 鬱積を極めた思いがあふれ、
 柄にもなく大声で叫んだ。

 三角に折れた新聞紙を殴る。
 どうにも折り目が気に食わない。
 自分で折ったことを思い出した。


 クールダウンは黄金色こがねいろの草原。


 村人たちが集まっていた。

 行方不明のお婆さんについて、
 駐在さんによる情報収集。

 本気にしていない村人たちは、
 とりわけ幼い子供たちは、
 ふざけた回答で彼を困らせた。

 茂みからお婆さんが飛び出した。

 めでたしめでたし。

 閑話休題、

「前にも来たことがあるな」


 もう少しだけ歩いてみた。

 女がタブレットに張りついて、
 図形が渦巻く映像に夢中。

 親子と見える無邪気な二人は、
 抽象映画の先駆者たちは、
 鋭利な着想で行く末を変えた。

 私の視線は伝わらないみたいだ。

 めでたしめでたし。

 閑話休題、

「前にも来たことがあるな」


 清潔感に富んだ黄金色の草原。


 幾何学模様のリシンは見飽きた。
 跳ね回る宗教性が気に食わない。
 丸や四角が信念を揺さぶる。

 白堊はくあのぞく彼方の野景やけいは、
 生活感のにぎわいからはぐれ、
 整然とした勁草けいそうの目覚め。


「もう少し遠くまで行ってやろうか」


 瞬間、四度のノックが邪魔をした。


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