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多摩川にて
川崎へと向かって丸子橋を渡る途上、
鴨の群れが優雅に無相関を示した。
1羽の烏が欄干に降り立って、
運動場の水溜まりには東横の赤。
どこかの親子が描いた放物線を、
目で追う一瞬で誰かに追い越され、
雲間の太陽には背後を取られた。
再生され立てのお気に入りの歌が、
やむまでの数分間だけ土手を歩こう。
雑草のラインを辿るのもいい。
斜めのコンクリートもいい。
手堅く轍に頼るのもいい。
いくつかの道筋が過ったものの、
踏まれて強くなる草々なのだと、
決めつけて先達の誘いを退けた。
それも束の間で終いには、
川幅と器の類似点に気づき、
磐石な轍に釣られてしまった。
ポケットに入れた手を冷やす北風が、
やむことを待たずして最後の1行。
この先には冬枯れの桜が並んで、
その先には小川のせせらぎがある。
それらをお預けにして踵を返す。
左手の親子が織り上げる軌跡に、
もう2次関数の出る幕はない。
自由奔放な鴨たちは相も変わらず、
無相関のプロットを決め込んでいた。
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