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可愛相
一般的には愛すべき、
重要他者を厭うこと。
瞬間の滅多刺しが得意なそれは、
俺の嗄れ声を封じ込めた。
厭らしい世間体を覗かせながら、
前非を有耶無耶にしたいらしい。
どうせ生かし合い殺し合うなら、
下手な前置きは省略しないか。
愛すべき霊園の遠く遠くに、
容認されない嫌悪を祀らん。
一般的には愛すべき、
重要他者を厭うこと。
無為の下方比較が得意なそれは、
俺の足跡を扱き下ろした。
忌々しい嫉妬心を震わせながら、
軽薄な信用を誇示したいらしい。
どうせ騙し合い利用し合うなら、
下手なポーズは省略しないか。
愛すべき霊園の遠く遠くに、
容認されない怨恨を祀らん。
こちとら世間を奪われたのだ。
お前らの世間を奪われたのだ。
なんて言い分が罷り通る訳ないか。
「新しい病の匂いがします」
通報があったので駆けつけました。
まずはあの頃を掬い出そうか。
演技できた頃を掬い出そうか。
月にアメリカがあった頃、
お別れの駅で泣いたこと。
お別れの機微に慣れた頃、
明るい未来を騙ったこと。
コンビニスイーツ1個分ほどの、
虫の知らせにはならない程度の、
孝行を吝嗇る手はないでしょう。
そんな倫理で誤魔化せる訳ないか。
平気な人だっているのだろうが、
頼られた瞬間メンターになる僕は、
有線由来の「挫けそう」なときに、
何を宛てがって生きていけばいい。
他人の鼻歌に揺れられるような、
くすぐったい人に目移りする僕は、
有線由来の「あなた」や「君」に、
誰を宛てがって生きていけばいい。
づわっと懐かしい畳の匂いがした。
「お嫁さんの顔ば見るまで死ねんばい」
(祖母の痩けた手を思い出せ)
「いつかピアノを披露するよ」
(靭やかに動けるはずの己が手を翳せ)
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