=================== 閃きの延命 帰りの電車が空いていたから、 閃きを見殺しにするのをやめた。 多摩川を越えて顔を上げたら、 孤高の烏になれるだろうか。 明日が来るのが怖かったから、 閃きを見殺しにするのをやめた。 眠れないのはもう慣れたけど、 カーテンの向こうが寂しくて。 いつかの空が愛しかったから、 閃きを見殺しにするのをやめた。 頬を伝って消える涙よ、 重力に逆らって飛んでいけ。 葉桜が人知れず死んだから、 閃きを見殺しにするのをやめた。 褒められもせず、目も向けられず、 踏み殺されるなんてあんまりだ。 切り裂いた川面が白んだから、 閃きを見殺しにするのをやめた。 そこから滲む血液の赤を、 インクポットに溜めてペンを執れ。 ===================
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