123. 利己一年

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利己一年


 生半可な努力と生半可な挫折で、
 二十五のメメントを残したものの、
 変わらず虚弱なレジリエンスに、
 自己中と易怒性いどせいのアニバーサリー。


 大なり小なり問題はあった。

 後回しにしていた供述書の作成と、
 先回りするようなキリルの甘言かんげんと、
 不意打ちの副反応、不注意の火傷。

 大なり小なり邪魔者もいた。

 成果を出したら奇人扱いする奴や、
 冗談に見せかけて本心であおる奴や、
 午前九時の睡魔、日曜日の虚脱感。


 生半可には見えない一気呵成いっきかせいで、
 二十四の駄弁ごと対処したものの、
 華やぐ一過性のストレングスに、
 ひどく夢見心地な主成分の馬鹿騒ぎ。


 爬虫類脳はちゅうるいのうを刺激する程度の、
 卑しさに溺れるのも一興か。

 字幕の半角スペース程度の、
 優しさにれるのも一興か。


 うずく中指をじ伏せて、
 蹴散らせ、夜雪やせつの花吹雪。


 大して波のない数十年を、
 自分の手で汚して美化した無象むぞうめ。

 歴戦の勇者ぶる嫌らしい無象め。

 弄ばれている精神年齢を、
 相手の実年齢で誤魔化した無象め。

 歴戦の賢者ぶるいやらしい無象め。


 熱は一瞬、後の祭りだ。


 たったそれっぽっちの残留物で、
 人生経験豊富なつもりか。

 他人の言葉でしか語れないかたに、
 代弁して頂いたら満足か。


 疼く中指を捩じ伏せて、

 蹴散らせ、夜雪の花吹雪。

 熱は一瞬、後の祭りだ。


 やましさ由来のサッケードでは、
 捕捉に至れない代物を、
 そわそわと血の香る深爪で、
 剔抉てっけつしたい利己一年。


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