104. アオスジアゲハ

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アオスジアゲハ


 いつか祖母が道端で助けてあげた、

 大蟷螂おおかまきり末裔まつえいが上京して小洒落こじゃれた、

 求愛の次の次にざくざくわれた、

 結果として生を受けた一匹の彼が、

 飄々と ひょうひょう した足取りでじ登る壁は、

 思い出を伴わない母校と結ばれた、

 体制を重んじる海豚いるかに指揮された、

 遊園地の断末魔を響かせるだけが、

 唯一の役割だと思い込んだたわけが、

 有酸素運動を経て見繕ったはかなげな、

 夕涼みにかこつけて横目で見る健気けなげな、

 旅程に終点がないと悟って砕けた、

 どうでもいい将来をはばかって流れた、

 不健康な汗の跡を抹消する白けた、

 展開を黙殺した罰としてのけがれが、

 染みついた身体からだで仰々しく迎えた、

 調子づいた日曜日の盲点ですがれた、

 救いようのない鈍感な瞳が捉えた、

 翠色みどりいろの因果応報をその羽にたたえた、

 蠱惑的こわくてきなダンサーに私は身構えた。


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