157. 我、咲きに

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我、咲きに


 押しては引かれ、
 引いては押され、
 睡魔とすれ違う連日連夜。

 便箋の枚数が減ったから、
 憂鬱を見せない表現力で、
 豊潤な未来を匂わせたり、

 1つ上にあるシャワーフックを、
 あえて死角に追い込んでみたり。

 そうこうしていたら橙が だいだい 切れて、
 全関係者に置いていかれた。

 抜き去る道があるとすれば、
 それは禁忌肢くらいのもの。


 押しては引かれ、
 引いては押され、
 睡魔とすれ違う連日連夜。

 大怪獣の邦画を見たから、
 ソフビで培った想像力で、
 少し先のことを考えたり、

 地上波の特集にはすくえない曲を、
 機械に任せてシャッフルしたり。

 そうこうしていたら橙が綺麗で、
 全関係者に会いたくなった。

 裏切った形の相手の名前が、
 看板に浮かんでまぶしい午後。


「また手紙書くよ」ってうたいながら、
 孤影悄然こえいしょうぜんたる大島桜おおしまざくらに、
 黒鉛が踊るような大嘘をく。

「もう最後かもな」って思いながら、
 刎頸ふんけい未満の同期の桜に、
 卒なく微笑むアウトロを組む。


 灰色になろうとも無理にでも咲け。

 何色になろうとも無理にでも笑え。

 咲いた後が正念場の人生において、
 私は早いところほころびる必要がある。


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