156. 太陽の謙遜

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太陽の謙遜


　早咲きに酔った大泣きの余波で思い出すどころか誘い出す始末。

　オペラグラスは疑っていた。

　不要だろう晴雨せいう兼用の傘。

　隔てた月日が補正する高揚に乗っかれもしない重症冥利。

　暗転の隙を突いて指で拭いた涙に「光、届くな」と祈りはしないよ。


　人混みに酔った足取りの余波で目は汚さずとも靴を濡ぬらす始末。

　オペラグラスは軽くなった。

　杞憂きゆうだった晴雨兼用の傘。

　迷いを忘れて振り返る眺望に心動かすには足りない光子こうし。

　物思いに耽ふけったパンジーは確かに曲名に使われてもおかしくないよ。


　特別な存在であるかのように錯覚させるのは天然の妙技。


　落英の生まれを秒で覚さとるのは太陽の所業ではございませんか。

　雨催あまもよいに星座を見出せるのは太陽の所業ではございませんか。


　数千の温度差は不完全燃焼の僕が断聴だんちょうせざるを得ない音楽を増やした。

　あなたがあまりにも照らし上手だから。

　あなたがあまりにも照らし上手だから、

　尊敬と憧憬に潰ついえそうな僕の方が見下ろさざるを得ない物理を恨んだ。


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