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アトピーの詩々
(『第0・終局』4/4 )
愛煙家を匿う桜の木を見ながら、
扁平質な惣菜パンを食んでいた。
細やかな努力は決まってご破算。
先生や級友のユーモアのせいで。
この心痛を知る全ての貴方へ。
掻破欲を縛り上げた後ろ手なら、
血を見ない覚醒も夢じゃないさ。
病的な努力もいつだってご破算。
契りたがる頬を嫌う枕のせいで。
この心痛を知る全ての貴方へ。
禁忌肢が風を吹かす冬の橋上。
手をかけた欄干に何が残ろう。
居残りを食らった噴火口は、
命だけを死守した名誉の負傷だ。
なんて合理化も秒で麻痺して、
第一印象で引かれた一線。
目を見れば分かる。
見なくても分かる。
もう少し巧くやれ、
盗み見たいなら。
着れない半袖。
言えない本音。
欠伸を嫌悪して噛み殺した末、
幸先と絶交して突っ伏した机。
本当は仲間に入りたいのに、
体が親密を許さなかった。
本当は誰かに頼りたいのに、
頭が弱音を許さなかった。
だから一人で。
ならば独りで、
もう少し長くやれ、
狂い咲けるから。
掻き壊した共感。
罰としての冷感。
化け物扱いされてきたせいで、
他人の温もりに焦がれた訳で。
肩に当たる日傘。
絡みそうな指先。
敏感を通り越した欠陥肌では、
半日の付き合いも痛烈だった。
それでも二人で、
ときには二人で、
笑い話なんかにできたらいいな。
笑えない正の罰は収まったから。
マスクに固まった滲出液は、
今思い返せばトパーズにできる。
ダークな生地に散る落屑は、
思い返さなくても細雪にできる。
「だから貴方も希望を持って」
そんな綺麗事は言わないぜ。
貴方の未来は明るくはないが、
たぶん今よりは悪くもないさ。
こんな気休めも響かないよな。
投了すべきだ。
我咲きに行かせてね。
河口が見えるんだ。
いつかこの鱗屑も惹句に変えて、
書き鳴らす詩篇で飯を食うのさ。
それまで間違っててね。
折れなかった零の矢。
投了すべきだ。
投了すべきだ。
禁忌肢が風を吹かす冬の橋上。
手をかけた欄干に何が残ろう。
傷を負った皮膚のまま、
このフィナーレ、
呼嗚。
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