200. アトピーの詩々

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アトピーの詩々うたうた
(『第0・終局』4/4  )


 愛煙家を匿う桜の木を見ながら、
 扁平質へんぺいしつ惣菜そうざいパンをんでいた。

 ささやかな努力は決まってご破算。

 先生や級友のユーモアのせいで。

 この心痛を知る全ての貴方あなたへ。


 掻破欲そうはよくを縛り上げた後ろ手なら、
 血を見ない覚醒も夢じゃないさ。

 病的な努力もいつだってご破算。

 ちぎりたがる頬を嫌う枕のせいで。

 この心痛を知る全ての貴方へ。


 禁忌肢が風を吹かす冬の橋上。 きょうじょう 

 手をかけた欄干に何が残ろう。


 居残りを食らった噴火口は、
 命だけを死守した名誉の負傷だ。

 なんて合理化も秒で麻痺まひして、
 第一印象で引かれた一線。

 目を見れば分かる。

 見なくても分かる。

 もう少しうまくやれ、
 盗み見たいなら。


 着れない半袖。

 言えない本音。

 欠伸あくびを嫌悪してみ殺した末、
 幸先と絶交して突っ伏した机。
 
 本当は仲間に入りたいのに、
 体が親密を許さなかった。

 本当は誰かに頼りたいのに、
 頭が弱音を許さなかった。

 だから一人で。

 ならば独りで、

 もう少し長くやれ、
 狂い咲けるから。


 き壊した共感。

 罰としての冷感。

 化け物扱いされてきたせいで、
 他人ひとの温もりに焦がれた訳で。

 肩に当たる日傘。

 絡みそうな指先。

 敏感を通り越した欠陥肌けっかんはだでは、
 半日の付き合いも痛烈だった。

 それでも二人で、

 ときには二人で、

 笑い話なんかにできたらいいな。

 笑えない正の罰は収まったから。


 マスクに固まった滲出液は しんしゅつえき 、
 今思い返せばトパーズにできる。

 ダークな生地きじに散る落屑らくせつは、
 思い返さなくても細雪ささめゆきにできる。


「だから貴方も希望を持って」


 そんな綺麗事は言わないぜ。


 貴方の未来は明るくはないが、
 たぶん今よりは悪くもないさ。

 こんな気休めも響かないよな。


 投了すべきだ。


 我咲われさきに行かせてね。

 河口かこうが見えるんだ。

 いつかこの鱗屑りんせつ惹句じゃっくに変えて、
 書き鳴らす詩篇しへんで飯を食うのさ。

 それまで間違っててね。

 折れなかったぜろの矢。


 投了すべきだ。

 投了すべきだ。


 禁忌肢が風を吹かす冬の橋上。

 手をかけた欄干に何が残ろう。


 傷を負った皮膚のまま、

 このフィナーレ、

 呼嗚ああ。


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