59. 一月中旬、説き、失笑

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一月中旬、き、失笑


 配信ライブをたばっかりの、
 卯建うだつの上がらぬバンドと歌う。

 用があるからと嘘ばっかりの、
 私は途中でステージを降りた。

 マイクスタンドを抱えながら、
 やや千鳥足で楽屋へ向かった。

 後から戻ったメンバーたちは、
 私を責めることはしなかった。

 存在しないキーボードの人が、
「君は何となく夢に出てきそう」

 返答に困って黙り込んだ私に、
「知ってる人は夢に出ないけど」

 近くに立っていたボーカルは、
「見た物に味を感じる気がする」

 咄嗟とっさに知識を絞り出した私は、
「共感覚みたいな話でしょうか」

 興味を示したメンバーたちは、
 私のちぐはぐな説明に笑った。

 ぼんやり違和感を抱えながら、
 確かな足取りで家に向かった。

 道すがら出会った関東芸人を、
 師と仰いだのは何のつもりか。

 考える間もなくあふれた笑いを、
 鳴り損なったアラームとまがう。


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