=================== 一月中旬、説き、失笑 配信ライブを観たばっかりの、 卯建の上がらぬバンドと歌う。 用があるからと嘘ばっかりの、 私は途中でステージを降りた。 マイクスタンドを抱えながら、 やや千鳥足で楽屋へ向かった。 後から戻ったメンバーたちは、 私を責めることはしなかった。 存在しないキーボードの人が、 「君は何となく夢に出てきそう」 返答に困って黙り込んだ私に、 「知ってる人は夢に出ないけど」 近くに立っていたボーカルは、 「見た物に味を感じる気がする」 咄嗟に知識を絞り出した私は、 「共感覚みたいな話でしょうか」 興味を示したメンバーたちは、 私のちぐはぐな説明に笑った。 ぼんやり違和感を抱えながら、 確かな足取りで家に向かった。 道すがら出会った関東芸人を、 師と仰いだのは何のつもりか。 考える間もなく溢れた笑いを、 鳴り損なったアラームと紛う。 ===================
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