126. あの背この背

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あの背この背


 憧れ腐った遠くの背。

 半ば言わされたパイロット。
 仮定に過ぎない法務技官。
 絵にいただけの映画監督。
 顔もわからないバンドマン。

 ときにそれらは阿諛追従あゆついしょうで、
 はたまたすすけたエピゴーネン。

 どうせ最後には猫背になって、
 心身ともに、丸くなる。

 どいつもこいつも丸くなる。


 信じあぐねた近くの背。

 帰って来なかった自衛隊員。
 毒を処方した高慢な医者。
 達筆で気をんだ学年主任。
 秀でて見えた碩師せきしの信者。

 ときにそれらは付和雷同で、
 はたまたクリアな心理的盲点。

 どうせ最後には猫背になって、
 心身ともに、丸くなる。

 どいつもこいつも丸くなる。


 あの背この背と距離を保って、
 グラフィック頼みの境界線。

 影響されることこそすれ、
 傾倒に走ることなかれ。


 見渡せる背には際限があるが、
 美酒佳肴びしゅかこうでプロフが肥えるより、
 空腹を燃料に自彊じきょうするつもり。

 手の届く背にも際限があるが、
 歯にきぬ着せて齲歯うしが増えるより、
 健康を第一に自嘲するつもり。


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