67. 絶念前夜

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絶念前夜


 眠れない夜がありました。

 悪心おしんあえぐ私の代わりに、
 ぽたりぽたりと落涙らくるいする、
 少しだけ優しい夜でした。

 朝が来るのが心底怖くて、
 今を力業ちからわざで延長しようと、
 抵抗を試みた夜半よわでした。

 明るむ部屋に呼吸が乱れ、
 時計を見るたび身が縮む、
 絶体絶命の夜明けでした。

 成し損なった能事のうじの数々、
 折り重なった病気の数々、
 全てに貫かれた夜でした。

 その日は全てが真っ白な、
 初めて本分を諦めた私の、
 涙もれた水曜日でした。


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