=================== カクテライズ (『アンカクテライズ』2/2 ) 吊り屋根の下でポップに励ます、 たった一歳しか違わない彼女の、 真っ赤な衣装の小さな背中には、 自分の背中とは縁のない何かが、 背負い込まれていたに違いない。 逆さまのギターより遥かに重く、 放り投げたピックより速く鋭く、 幾千のサーチライトより光瞬く、 何ともつかない何かを背負って、 何も持たぬ然として舞台を巡る。 何かありげに紡いだバラードは、 視界を暈すには十二分な言葉で、 十二分な旋律で十二分な表情で、 二時間と二秒間を「=」で結び、 予習と復習の果たし状を手中に。 自殺者の決意も思春期の想念も、 一瞬間の惜別も夢想家の至純も、 猟奇的な愛情も青天井の寂寥も、 期待値の低迷や平均値の邪推を、 やおら覆してカクテルを成した。 ===================
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