8. 閃きの延命

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ひらめきの延命


 帰りの電車がいていたから、
 閃きを見殺しにするのをやめた。
 多摩川を越えて顔を上げたら、
 孤高のからすになれるだろうか。

 明日が来るのが怖かったから、
 閃きを見殺しにするのをやめた。
 眠れないのはもう慣れたけど、
 カーテンの向こうが寂しくて。

 いつかの空が愛しかったから、
 閃きを見殺しにするのをやめた。
 ほほを伝って消える涙よ、
 重力に逆らって飛んでいけ。

 葉桜が人知れず死んだから、
 閃きを見殺しにするのをやめた。
 褒められもせず、目も向けられず、
 踏み殺されるなんてあんまりだ。

 切り裂いた川面かわもしらんだから、
 閃きを見殺しにするのをやめた。
 そこからにじむ血液の赤を、
 インクポットにめてペンをれ。


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