105. E列 21番のアンサー

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E列 21番のアンサー


 陳腐なメタファーを反転させた、
  左肩に絡みつくカラスアゲハ。

「そうか、あれこそ本物のダンサー」

 憑依ひょういされながらサビに入れば、
 主役を食う勢いで右脚が暴れた。

 歌声は遠く蹴飛ばされた挙げ句、
 ドラムの爆発に捨象しゃしょうされる。


 やおら前意識には引き際の細波さざなみ。


 矯正視力でかろうじて捉えた、
 表情をヒントに推測するテーマ。

 一大事業のサプライズにかぶせる、
 愚痴も言い訳も少しは許せる。

「嘘です、ありがとうございました」

 偽って同調した大きな拍手が、
 距離を置く予定の私のアンサー。


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