82. 鈍痛

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鈍痛


 プールに入る前のシャワーの冷たさ、
 それくらいが地獄だった幼少期から、
 短期間にあきれるほどの苦難を見たが、

 さて今は何番目のステージだろうか。

 肉体を散らすようにデザインされた、
 およそ神の御業みわざとは思えない試練は、
 ついには精神の自傷行為にまでこじれた。


 胸を締めつけるために音楽を聴いて、
 素顔を知るためにアトピーを書いて、
 瞬間瞬間の思い出殺しを繰り返して、

 さて今は何番目のステージだろうか。

 気鋭のシンガーソングライターにも、
 大層な新人賞を取った若手俳優にも、
 容易たやすなびいてしまう自分勝手な理想。


 玉になどしてくれなかった艱難かんなんども、
 賢くなどしてくれなかった逆境ども、
 後腐れのない別れなどは慣れたもの。

 この苦心が第何波の回り道だろうが、

 大きく手を振って見送った記憶より、
 見送られた記憶の方が鮮やかなのは、
 無二の仕合しあわせにしてずっしりと痛い。


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